医師としての働き方の選択肢は数多くありますが、そのなかでも代表的なのが「クリニックを開業して、開業医として働く」という選択肢です。
しかしクリニックの開業には常に「廃業」の危険性が伴います。これを避けるためには、事前にきちんと「起きこりうるであろう問題」への解決策を講じておくことが求められます。
2021年のクリニック休廃業・解散率は過去6年で最多
新型コロナウイルス(COVID-19)の流行で医療人材の不足が叫ばれていましたが、2022年の1月28日に帝国データバンクが出した資料では衝撃的なことが分かっています。
これは2016年から2021年にかけてのクリニックの休廃業・解散率を調べたものです。それによれば、2021年に休廃業・解散をしたクリニックの数は過去6年間で最多ということでした。
他の年はすべて550件以下であるにも関わらず、2021年は実に567件のクリニックが休廃業・解散をしています。
クリニックがその扉を閉めて業務を終了する理由 は1つではなく、経営面に問題がなくても休廃業・解散にいたるクリニックは多くあります。
資金面に問題がない状態でも休廃業にいたるクリニックは多くありますし、個人経営から医療法人(あるいは医療法人から個人経営)などのように組織変更をした場合であっても休廃業として計上されます。
また、コロナ禍のなかにおいても、毎年約500件ペースで診療所の数は増えていっています。そのため、「コロナ禍によって経営が立ち行かなくなり、『倒産』に至るところが多かった」とまでは断言できません。
しかしこのような背景を踏まえてもなお、休廃業・解散に至るクリニックの件数の多さは注目すべきものです。また、診療所・歯科医院の数がコンビニの数を上回るとさえ言われている現在においては、漫然とクリニックを開業することは非常に危険であるといえます。
診療所・歯科医院の経営が難しくなっている2021年以降の時代だからこそ、これを開くためには、事前に起こりうる問題点を把握してその対処策を講じておく姿勢が求められるのです。
クリニック開業を成功させるためのポイント1~後継者となりうる人材の確保
医師はその職業の特性上、若い年齢で開業することは非常に難しいといえます。ストレートで進んでも医師として活躍できる最少年齢は26歳ですし、診療所・医療機関の代表者となるためにはさらに経験を積まなければなりません。
このようなこともあってか、「病院」「診療所」のどちらであっても60代以上が代表者になっているケースが実に82パーセントを超えています。そしてこれが、クリニックの休廃業・解散の理由にもなっています。つまり、院長(開業者)が高齢になり引退しようとしたときに後を引き継ぐ人がおらず、クリニックを閉鎖しなければならなくなるケースが斌夫圧しているのです。
「自分一代限りでクリニックを廃業する」と初めから決めているのであればそれは1つの選択肢といえますが、そうではない場合、後継者となりうる人材を確保しておくことが必要です。
なおこの「後継者」は、血のつながりのない人であっても構いません。 またこの「後継者探し」は、引退をするまさにそのときではなく、それ以前から行っておく必要があります。
後継者探し自体にも時間がかかりますし、その後継者が自分のクリニックになじむかどうかを確かめる時間も必要だからです。
加えて、まだ気力・体力・時間に余裕があるうちに後継者探しを始めた方が、いろいろな意味で消耗もしにくいという事情もあります。
クリニック開業を成功させるためのポイント2~医師以外の人材の確保
クリニックの開業においてもっとも重要な人材となるのは当然医師ですが、クリニックを取りまわすには医師以外の人材の確保も必須です。
たとえば受付を行う医療事務であったり、診療を補助する人であったり、経理関係を担当する人であったり……と、多くの人材が必要になってきます。
開業した場合はこれらの人材の確保や採用の決定を、最初期段階では経営者である医師が行わなければなりません。
当然そのために求人をかけることも必要ですし、応募してきた人のスキルや人柄を見抜くだけの力量もなければなりません。
また、従業員に限ったことではありませんが、人との関係は「採用して終わり」というものではありません。採用した人たちが滞りなく仕事を進められるようにするために、人間関係を円滑にする努力を払う必要もあります。
従業員のために福利厚生を整えたり、事情で仕事を辞めなければならなくなった従業員が出た場合はその補填をしたり……といった対応も求められるでしょう。
クリニック開業を成功させるためのポイント3~「宣伝」も重要
勤務医から開業医になるときの大きな差異点として、「患者様の確保のための行動をとる必要が出てくる」というものが挙げられます。
積み重ねてきたキャリアやバックボーンによって多少違いは見られるものの、基本的には「開業したばかりのクリニックに、患者様が大挙して押し寄せ、そのまま通い続けてくれる」という状況にはならないと考えておかなければなりません。
かかりつけ医を持つことが勧められるようになっている現在では多くの人がかかりつけ医を持っていますし、また特別の理由がない限り「鞍替え」をすることもありません。
さらに、「そもそも新しいクリニックができたという情報にさえ接しない層」も少なくないことを自覚しておかなければなりません。
このような状況では、積極的に「宣伝」を行うことが必須であるといえます。
ホームページを出すことはもちろんのこと、どのようにアピールしていけば集客につながるのかを考えなければなりませんし、宣伝のために経費をかけるという視点を持つことも重要になってきます。
クリニック開業を成功させるためのポイント4~経営面を意識する
「クリニックが業務を終了する理由は、経営面だけの問題ではない」と最初に述べたとおり、経営に問題がなくても後継者不足などで運営を続けられなくなるケースもよくあります。
しかし、当然のことながら「経営面」も無視することはできません。2021年も30件を超えるクリニックが、経営の不健全さを理由に倒産しています。
クリニックを一から開く場合、当然「初期投資」がかかります。診療科によって違いはみられますが、クリニックの場合は医療機器を導入することがほぼ必須となるため、初期投資も高くなりがちです。
医療機器の値段だけで2000万円を超えるケースはよく見られますし、場合によっては4000万円を超えることすらあります。さらにここに内装費用などがかかるため、クリニックの開業はほかの業種に比べてもかなり経営面での負担が大きいものといえます。
なかには一括ですべて支払える人もいるかもしれませんが、多くの場合は「ローン」というかたちで返していくことになるでしょう。
逆にいえば、毎月ローンを返せるだけの収入を確保しなければならないということです。さらに、雇い入れている職員の人件費や光熱費、消耗品にかかる費用なども計算に入れなければなりません。
これらに代表される「経営面の意識」は、開業医である以上持つことが必須となるものです。
このように、開業医には「医師」としての仕事だけでなく、「人事担当者」「経営者」としての視点も求められます。 しかし忙しいなかでこれらの仕事を一人だけでやり切ろうとすることは、現実的な対応方法であるとはいえません。
一人で行おうとすると仕事量も増えますし、専門ではない分野で的確な結果を導き出すことは非常に困難です。医療分野以外のこれらの「クリニック開業にまつわる困難」は、専門業者のサポートを受けて解消していく方がよいでしょう。
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